HONYAKU

Introduction & Translation of Japanese/English literature & Culture 日本と英語の小説の紹介

Tuesday, August 22, 2006

Super-Frog saves Tokyo by Haruki Murakami

4 Super-Frog saves Tokyo by Haruki Murakami

片桐が部屋に戻ると巨大なカエルが彼を待っていた.がっしりとしたカエルで,後ろ足でたった姿は180cm以上ある.せいぜい160cmしかない上にやせすぎの片桐は,カエルの堂々とした上背をみて圧倒された思いだった.
「カエル君と呼んでください」,カエルははっきりと力強い声で言った.片桐は玄関に立ったままじっとして声も出せなかった.「怖がらないでください.暴力はふるいませんから.入ってドアを閉めてください.さあ,はやく」
仕事鞄を右手に持ち,鮭缶と野菜の入った買い物袋を左手にぶら下げたまま,片桐はまだ身動きできなかった.
「さあ,片桐さん.急いでドアを閉めて.靴を脱いでおあがりください」自分の名前が呼ばれたおかげで,片桐は気を取り直した.言われたとおり,ドアを閉めて,買い物袋を一段高い床において,仕事鞄は手に持ったまま靴を脱いだ.カエルが手振りで台所のテーブルに座るよう促したので,片桐はそうした.
「申し訳ありません,片桐さん.お留守の間に入ってしまいました」カエルは言った.「帰ってきて私を見たら驚かれるだろうとは思ったのですが.でも仕方がなかったんです.お茶はいかがですか.もうお戻りだろうと思ってお湯を沸かしておきました.」

片桐はまだ仕事鞄を手に抱えていた.誰か僕を担いでいるんだ,片桐は思った.だれかがこの巨大なカエルの着ぐるみを着込んで,僕をからかっているんだ.しかし,カエルがわかした湯を鼻歌を歌いながら茶瓶に注いでいるのを見てわかった.これは本物のカエルの手足が動いているのだ.カエルは緑茶の入った湯飲みを片桐の前に置いてから,自分のために茶をくんでいた.

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